突発性難聴の話

あんまりストレスの無いようにのんびりと暮らしているつもりでも、海外というだけで無意識のうちに我慢したり無理をしたりするようで、突発性難聴のようなものにかかったことが何度かある。

 

あんまり苦労自慢は好きじゃないし、体質みたいなものだと思うのだけれど、自分はホームシックにあまりかからなかった分、体に変調をきたしていたようだ。

かかったのは11月くらいで、授業にも慣れてきたころだ。慣れてきたとは言えど、100パーセント理解できることはまれで、自分のわからないところはiPhoneでしていた録音を聞きなおしてなんとか補完していた。

集中力は体力と比例していて、一日に6時間授業がある日は最後の2時間は理解力も落ちていた気がする。確かに聞こえているし、文字が頭に浮かぶのに意味が入ってこないことがあって、ジワリと変な汗をかいたものだった。たちが悪いのは、その最後の2時間の授業担当が、よく冗談を言う先生だったことだ。冗談が聞き取れない場合は、クラス中笑っているのに僕だけ険しい顔をしていることになる。フランス人の笑いの沸点は総じてかなり低いのだが、それにしても笑顔はコミュニケーションの基本(普段根暗でもこういうことは考えるのだ)。笑いたいのだが笑えず、そういうときに授業中の孤独感はたしかにあった。

 

そんな中、片耳が急に聞こえなくなった。ストレスで難聴になるというという話は知っていたのだけれど、自分がなるとは不思議だった。日々なにかと成長しているつもりだったし、生活もだんだん楽しくなってきたころだったから、耳が聞こえないとなると何故だか理由がさっぱりわからなかった。それは気圧が高いとき、耳抜きをする前みたいな感覚だった。片耳だけが水中にいるようだった。原因がわからないから耳抜きを何度かするものの、さっぱり良くならない。音楽用語でいえば、「ゲインが低い」感じ。だいたい丸一日で治るが、油断をすれば一週間に三日くらい耳があまり聞こえない日が続いた。海外で耳が聞こえないのは致命的と言っていいだろう。聞こえる側の耳を教壇に向けてなんとかなったものの、ふいに物音がする方がわからなかったりもした。

 

とくにオチはないのだけれど、今は元気でなんとかなっているので、こういうものは本当に気持ちの持ちようなのだろうなと思う。でも体は正直なので、頭で大丈夫だと思っていてもだめなときはだめだ。よしもとばななに『体は全部知っている』という短編集があったけれど、ほんとにその通りだと思う。原因不明の不調が続いたときには、しっかり休みましょう。

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コメント: 2
  • #1

    だいご さわ (金曜日, 21 4月 2017 09:30)

    ちょっと時間空いちゃってるけど少し心配でコメントしちゃう。

    なかなか仏で医者にも行きにくいとは思うので、なんとかなることを願いつつ、昔精神科に勤めてた知り合いが言うには「異国に来ている人は何年かに一回くらい誰でも大なり小なり変調をきたす。」と言っていたので、「そういうもんか」と気にし過ぎないというのもありかと…

    大学院時代にフランスから来ていた友達が少しおかしい時期があったけど、結果的にジワジワ時間が経って落ち着いたので、時間が薬という見方も出来るかな…

    耳は体重の増減とかも関わってるらしいので、日本と同じくらいの程度を保つ方がいいかもね。
    俺も耳は実は難儀してます。(俺のはバリバリという音がするだけだけど)


    なんかまとまりなくごめん。元気でいて下さい。ブログ楽しみにしてます。イイねボタンがないだけでイイねって言ってるぜ。

  • #2

    ケガニ (金曜日, 21 4月 2017 21:33)

    ご心配おかけしてすみません。今はなんともないですし、奥さんも来て楽しく暮らしています!
    そうですよね。目に見えないストレスやなんやらで性格が変わる人もいると聞きます(僕はいたって普通ですが)。

    耳が体重と関係あるってのは初めて聞きました。だとすると少し太ったので危ないですね。なんとか日本に一時帰国するまでに戻したいのですが……。

    え、耳難聴なのですか!?それは知りませんでしたけど、音楽聞いたりギター弾いたりするときは大丈夫ですか?結構五感の中でも聴覚は精神と直結しているらしいので、気を付けないといけないですね。耳は敏感なのでしょうね。

    そのひとことがありがたいです。また不定期ですがちょくちょく更新しようと思います。一時帰国のときにでも一杯やれたらうれしいです。